泥土圧シールドの土砂噴発防止等、多目的対応の高分子添加材
概 要
泥土圧シールド工法は、シールドマシンのチャンバー内圧力と掘削地盤の圧力のバランスを保ちながらスクリューで排土します。掘削地盤の地下水が豊富で崩壊性の高い地盤※1の場合、この土圧バランスを崩してしまい、スクリューゲートから地下水と土砂が勢いよく飛び出してしまう噴発現象を発生することが多くあります。その結果、切羽の崩壊を招くこととなります。また、一度噴発状態に陥った場合、再度安定した掘削土砂を得るのに大変労力を要します。
こうした場合、高分子ポリマーTACスルー溶液をチャンバー内に注入することで、地下水と速やかに反応し、その増粘効果で掘削土砂の含水率を低下させて掘削土砂の塑性流動化を図り、土圧バランスを取り戻すことができます。さらにTACスルー原液をスクリューに注入することで、プラグゾーンの形成が可能となり噴発を防止することができます。
※1:一般に崩壊性の高い地盤
粒径0.075mm以下の細粒分含有量が8~10%以下、
地盤の透水係数が10-2cm/secオーダ以上、地下水圧が50~70kPa以上等の条件が重複する砂および砂礫層
【出典:現場技術者のためのシールド工事の施工に関するQ&A、日本トンネル技術協会、Q28-3】 |
お客様のメリット
- 崩壊性の高い地盤でも掘削土砂の塑性流動化、噴発防止が可能で、切羽の安定を図れます。
- 砂礫層での塑性流動化と噴発防止、粘性土層でのカッタ前面やチャンバー内の付着防止、そして高粘度の2液型注入材(スルーショック)と多目的に使用でき、掘削土砂のスムーズな排土を得ることができます。
- TACスルー溶液と原液を適切に使用することで、TACスルー使用量を低減することが可能であるとともに、より高い効果が期待できます。
- 溶液型で高濃度のため、ストックヤードが少なくてすみます。注入方法も多様に対応できます。
特 徴
- TACスルーは、優れた親水性(溶解性)と著しい増粘効果を持った溶液型(エマルジョンタイプ)の添加材です。
外観 |
半透明液体 |
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主成分 |
アクリル共重合体他混合物 |
pH |
中性(7~9) |
比重 |
1.0~1.2(25℃) |
粘性 |
1.0~3.0dPa・s (参考:ケチャップ18dPa・s) |
荷姿 |
18kg/缶 |
- 使用方法
①塑性流動化用 |
水1m3に0.2~0.5%のTACスルーを添加して、粘稠性ある添加材とする。 |
②噴発防止用 |
水1m3に0.2~0.5%のTACスルーを添加して、粘稠性ある添加材とする。 |
③付着防止用 |
水1m3に0.05~0.1%のTACスルーを添加して、カッタ前面から掘削土の10~40%を注入する。 |
④2液型注入材用(スルーショック工法) |
鉱物系添加材に少量のTACスルーを切羽直前で1.5ショット混合させ、高粘度の添加材とする。 |
- 土砂へのTACスルー添加状況例
- スルーショック工法の施工事例
- 工事名:犬山系導水路A管扶桑町大字高雄字北郷から大口町仲沖二丁目地内間2000粍整備工事
- 発注者:名古屋市上下水道局
- 施工者:日本国土・桑原組・コムシス特別共同企業体
- 工事概要:泥土圧シールド工法、シールド外径φ3,080mm、延長3,259.7m、玉石混じり砂礫層
鉱物系(TAC-αⅡ)溶液と高分子系添加剤(TACスルー)とをショットさせ、塑性流動化させるスルーショック工法で施工。
配合例 A液:B液比率=2:1
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A液(1m3) |
B液(0.50m3) |
材料名 |
TAC-αⅡ |
水 |
TACスルー |
水 |
配合 |
49kg
(33kg) |
981L
(654L) |
10kg
(6.7kg) |
490L
(327L) |
※( )内は1.0m3当りの配合
※TACスルーは50倍希釈(20kg/m3)溶液 |
スルーショック工法の利点は、次のとおりである。
①A液側の粘土分と水をまとめて凝集し、フロックを形成(チャンバ内での反応)するため、掘削土と一体化がより期待でき、地下水の希釈に対しても抵抗性が高い。
②スルーショックは通常の添加材としても扱えるため、面盤から切羽への直接添加も問題なく、より撹拌効率が向上する。 |
【出典:施工「φ3,000㎜シールドで巨礫対策を駆使して帯水砂礫層を長距離掘進」、トンネルと地下vol.47、no.9、2016、P27~32】
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